物語:神父様と世界樹の葉

なんとなく思いついたのでメモ。ドラクエ的な何か。

ある日、勇者が教会を訪れて言った。
「神父様。私の仲間が戦いで命を落としました。
魂を呼び戻していただけないでしょうか。」
神父様は答えて言った。
「申し訳ありませんが、
今日はもう蘇生はできないのです。
明日改めていらしてください。」

勇者は納得し、
「ああ、魔力を使いきってしまわれたのですね。
それでは仕方ありません。明日改めてまいります。」
と言ったが、神父様は怪訝そうに
「何の話でしょう?
ちょうど今、世界樹の葉を切らしてしまっていて
明日、発注しておいたものが届く予定なのです。」
と答えた。

勇者は驚いた様子で言った。
「世界樹の葉!
《蘇生の呪文》を使っているのではないのですか!」
神父様は平然と答えて
「はっはっは。
私は商人ですから、呪文なんて使えませんよ。
もし私が《蘇生の呪文》を扱えるような高レベルの僧侶なら
とっくに魔王を倒しに行っています。」

勇者は今度こそ呆れて
「貴方は商人なのですか!神父様なのに!」
神父様は、何をいまさらといった顔で答えた。
「世の中の大半の人間は"特別な技術"を持っていないのです。
故に技術ある人間が生み出したものを
必要な相手に届ける仕事をするのです。
それが私たち商人です。
たまたま私は"神父"というラベルのついた
商人だったというだけのことですよ。
"特別な技術"をお持ちの勇者様には
縁のない話だったかもしれませんな。
はっはっは。」

勇者は無言で教会を去った。

その後、狂ったようにはぐれメタルを狩り
自力でレベルを上げた勇者は
《蘇生の呪文》を身につけ仲間を蘇生させたのだが
それはまた別の話である。