固有値について理解を深めるために「基礎線形代数と固有値問題」を読んだ

@uchumikさんから「基礎線形代数固有値問題」がいけているという情報を得たので速攻で購入して読んでいた。ざっと読み終えた(6章除く)ので感想を書いておく。


全6章で構成されている本。1章がベクトル。2,3章が行列。4,5章が固有値。6章が適用事例集。5章まで読むとSVD(特異値分解)が何をやっているのかが理解できる。そして6章はラグランジュの未定乗数法や主成分分析、マルコフ過程など固有値固有ベクトルの応用例が豊富に解説されている。私は5章まで一通り読んで6章は興味あるところだけ拾い読みした(弾性体とかはとりあえずは興味の範囲外なので・・・)。
6章に限らずそれぞれの概念に具体的な適用例が添えてあるので「結局これ何に使うの?」という感じにならないのが最大の特徴。応用中心だが定理の証明もきちんと書いてあるし、式変形に用いた既出の事項がある場合はカッコでどこを参照すればよいか書いてある。また練習問題には解答と解説があるなど極めて親切。


本書は固有値問題に対する理解を深める上で大変有用かつ親切だが、程度はそれなりに高い(超入門!みたいなゆるふわではないよ、ということ)ので購入前に内容を物色したほうが良い。また本書で挙げられている例題は物理学の基本的な事項(角速度とか)を既知としているので物理の知識ゼロだとつらそう。
この本が苦しい場合には「キーポイント線形代数」がわかりやすいので、そもそも固有値ってなんすか?って人はキーポイントを読むと良さそう。
参考:機械学習固有値とか固有ベクトルで詰まった人は「キーポイント線形代数」がオススメ(http://d.hatena.ne.jp/echizen_tm/20110612/1307879159)


個人的にはこの本を読んだことで苦手意識の強かった行列計算に対する見通しが大分良くなった。機械学習をやっている人にはお馴染みの半正定値性についてもすっきりした。応用を見据えた部分に絞った本なので、苦労して読んでも使える箇所は少しだけ、というこれまでの本の問題も解消された(とりあえずこの本を手元においておけば迷った時に参照できるという安心感がある)。
キーポイント線形代数の次に読む本として、オススメ。