一途な愛は設定をも超える!?「社会的には死んでも君を!」を読んだよ

「社会的には死んでも君を!」を読み終えた。タイトルからもわかるように主人公八平がヒロイン香月に対して一途な愛を貫く素敵な物語だった。
で。何故香月への愛を貫くと社会的に死ぬことになるのかというと香月の近くにいると「女性とえっちなハプニングに巻き込まれる」通称ラブコメ現象というものが起きる。ラブコメ現象によって世間の八平に対する評価はストップ安。なので社会的に死ぬよ、ということらしい。
ここまで書くと、社会的な評価もなんのその。ヒロイン一筋な主人公かっこいい!と思わなくもないとも言い切れない気分になる。
それはいい。それはいいのだが本作には大きな問題がある。


それは八平は香月から20メートル以上離れることができないという設定。この設定があるため愛していようがどうだろうがラブコメ現象は不可避だったりする。しかもその原因については全く明かされないまま物語が終わる。それどころかラブコメ現象という設定自体が中盤以降希薄なものとなっていっている。
実はヒロイン香月は幽霊。主人公である八平以外の人には見えないし声も聞こえない。触れることも出来ない。というもうひとつの設定があり、こちらの設定について物語は主に展開していく。幽霊であることとラブコメ現象の相関については全く描かれない。というより後半の物語を語る上でブコメ現象という設定自体が足を引っ張っているとしか思えない。ついでに言うと幽霊設定についても原因は何も明かされないまま終わる。
本作はMF文庫Jの新人賞佳作を受賞した作品なので一応、これ一冊で完結したお話になっているはずなのだが、まったく設定について根拠が何も語られずに終わるというのはなんというか斬新だと思いました。とはいえ設定なんて深く考えずに一気に読んで楽しみたい!という人には良いかも。ライトノベル特有の会話多め、改行多めの文体なのでさくっと読める。八平と香月のキャラが嫌いでなければ結構楽しめると思います。