「はじめての数論」を読了しました

2月から読み始めていた「はじめての数論」を読み終わった。大変面白く、また非常にわかりやすい本だった。全48章、特に詰まることもなく読み終えることができた(いくら入門書とはいえ詰まらずに読める入門書というのは本書以外では私は読んだことがない)。
ひと通り読み終えたということで(練習問題は除く)、改めてレビューというか感想を書いておく。目次等は以下の記事を参考にされたい。

アリ充に近づくために「はじめての数論」を読んでる - EchizenBlog-Zwei


本書を読むと何が得られるか
これは「数論の基礎」の一言に尽きる。具体的には「数を素数の組み合わせとして扱う」、「余りに着目して数を類別する」といったものを学ぶ。考え方を学ぶのが目的の本なので証明は読み飛ばさないほうが良いかも。

本書で扱うテーマ
上で述べたように「数論の基礎」を学ぶのが目的ではあるが副産物的に「RSA暗号」「フェルマの最終定理」について学ぶことができる。前者は実装可能なところまで説明がある。後者は概略を説明するにとどまっている。

本書の構成
一本道の構成にはなっていない。上で述べた「RSA暗号」「フェルマの最終定理」を大きな柱としつつもメルセンヌ数や連分数など本筋とは離れた話題も豊富。必ずしも順番に読まずとも読みたい箇所から読んでOK。一応「RSA暗号」の部分が最も実用的かつわかりやすいので「RSA暗号」に関する章(5-11、16-18章)を先に読むのがいいかな、とは思う。序盤から本筋でない章もでてくるので、あまりひとつの章にこだわり過ぎないほうが良いかも。

キーポイントは割り切りの良さ
本書は分かりやすく説明するという点で一貫している。この手の本だと後半失速して訳の分からないお茶の濁し方をするケースが散見されるのだけれど、本書は最後まで安定してわかりやすさを保っている。これは「入門を超えるレベルの定理は証明しない」というスタンスによって実現されている。説明する箇所しない箇所がハッキリしているので、説明している箇所を(入門レベルでは)集中して理解すれば良いという考え。これは賛否あると思うけれど入門で全てを知ろうというのはムシが良い話なので、ここは割りきるべき。

具体例が充実
まず具体例を挙げて、法則らしいものを見つける、そして証明。というのが各章に共通した構成。唐突に式が出てくることがないので「何この式??」ということがなく頭に入りやすい。すばらしい。

以上、ざっとレビューしてみた。全章通読したら1日1時間で、ふた月くらいかかってしまい結構疲れた。とはいえ非常に面白い本だったので全く失速せず最後まで読めた。原書の優秀さもあるけれど、翻訳の質もすばらしく、違和感はなかった。結構誤植が多いのが気になったが、誤植を自分で直しながら読めるくらいには力の付く本だと思う(私は数論初心者だったけれど誤植はすぐ気がつくレベルだった)。あとは後半のほうが計算量や二項定理など既に慣れ親しんだ話題が多く気楽に読めたという印象。
数論本はこれが初めてだったので他書との比較はできないが、これはもっていて損はない本だと思う。というか積極的に今すぐ購入すべき本ではないかと思います!