これが時代の最先端なのか 「お前のご奉仕はその程度か?」を読んだ

どうせ普通の萌え系ライトノベルなんでしょ。もう飽きたよ。そう思っていた時期が私にもありました。手に取って読み始めてみれば、そこは今までにない世界。なんだこのプレッシャーは!
そんなわけで「お前のご奉仕はその程度か?」を読んだ。この作品こそが時代の最先端。まさに新時代のライトノベルと言える。


本作の最大の特徴は「極端な台詞の多さ」であると言える。ライトノベルは一般の小説に比べて台詞が多い傾向にあるが、本作の台詞の量はそのなかでも突出している。まるで、流れるような台詞の連鎖こそが本作品の本質だと言わんばかり。
台詞と比べると圧倒的に量の少ない通常文も実に特徴的。結果的に量が少なくなっている、というよりはむしろ通常文の量を極限まで圧縮することが目的であるかのように簡潔。台詞の不要な場面では必要最低限の描写しか行わないために油断していると数行の描写で大きく場面が転換していることも。また、通常文を必要以上に圧縮し、欠落した情報を台詞で補うといった高度な手法も用いられてる。まさにsuccinct!簡潔ライトノベル(succinct light novel)時代の到来である。
別の特徴として三人称でありながら場面によっては一人称のような描写をする、というものがある。ここまでは他作品でもよく見られる手法なのだが本作の一人称描写はひと味違う。同じ場面内で一人称の主体となる人物がフレキシブルに入れ替わるのである!
もちろん人物によって考え方や持っている情報は異なるので現在の一人称の主体が誰であるのかを注意深く追っていかなければ、あっさり混乱してしまう。従来のライトノベルに比べて高い集中力が問われる作品と言える。作品自体は簡潔に纏め上げ、その上で高い集中力で一気に読ませようという試みは実に斬新であり、これこそが簡潔ライトノベルの本質なのだろう。
そして簡潔ライトノベルという新しい枠組みで本作が描こうとしたもの。それは「とりあえず出したい感じのキャラを出しまくってみました」という部分につきると思われる。とにかく盛りだくさん。物語も中盤になると主人公(高校生)のクラスメイトが幼女で、しかも暗殺者だったりしても全く驚かないくらいの世界が開けてくる。これもライトノベルの簡潔化によって集中力が高まっていたおかげだろう。
まとめると、本作では通常文を極限まで圧縮した上で、高い集中力を喚起するような一人称での主体変更を多用する「簡潔ライトノベル」ともいうべき文章表現を行った。そして集中力の高まった状態で高濃度の萌え成分を投下することで読者に圧倒的な印象を与えることに成功した。という部分が本作の肝だと思われる。
最後に一点。表紙のイラストに盛大なネタバレが入っているのはどうなんでしょうか。。。

※この感想記事は完全にネタであり「簡潔ライトノベル」は私が適当に言っているだけなので本作とは全く関係がありません。あしからず。